◆ ドア・サイド

「非常口の席、空いている?」
チェックインのときにそんなリクエストをするお客様は少なくない。

ここでの「非常口の席」とは、いわゆるスチュワーデスと向かい合わせの席のこと。私たちは「ドア・サイド」という呼び方をするけれど、お客様の中には「ドア横」と呼んで座席指定(シート・リクエスト)することもあるという。

確かに非常口の席は足が伸ばせる。もしそれが前方の左側の場合なら、ドアが開いたときに早く飛行機から降りることができる、というメリットもある。

例えば東京-大阪間などの「ビジネス路線」と呼ばれる便では、
「飛行機が到着したらすぐに会議!」
というような多忙な方が多いので、早朝便のその座席はかなり高い確率で、しかも早い時期にうまってしまうことがある。逆に言えばそれ以外の路線では、比較的リクエストしやすいのかもしれない。

私たちは離着陸の時に与えられたジャンプ・シートに座るので、少なくとも二回はお客様と向かい合わせになる。しかも、ある程度まとまった時間。そうなると必然的に相手の方の様子を見ながら、話しかけたり又は話かけられたり、という状況になる。

私たちが座席に着くとき、自分の前にどんな方がいらっしゃるのかはかなり気になること。素敵な男性が座っていてくれればそれはそれでうれしいことなのだけれど、それ以前に「いざ」というときに手伝ってもらえそうかどうか、がかなりのチェックポイントになる(これは私に限ったことなのかもしれないけれど(笑))。

「いざ」というのは、例えば緊急脱出の時などのこと。
国内線などは一つのドアに乗務員が一人しか座っていないことが多く、そんなときは是非とも手を貸して頂きたいと思っている。ちなみに現在非常口の席をリクエストするお客様には、何が起こったときに乗務員を助けていただく事があるのでご協力下さい、というご案内をしているようだ。

私の知り合いでも非常口に座ったお客様から食事の誘いを受け、それがきっかけで恋人同士になったケースもある。だから、非常口の席はちょっとした社交の場、あるいは自分自身をアピールする場になったりもするらしい。

思い起こしてみれば、確かに名刺も頂きやすいし、お話さえできればお互いに何らかのきっかけは掴めるのかな、とも思う。ただし、それは双方が相手を何らかの形で気に入って、
「もう一度会ってみたい」
という気持が起これば、だけれど。
ちなみにその二人はその後ゴールイン。四年間の結婚生活を送った。(結果的にはうまくいかなかったということになるのかもしれない。)

さて、私たちが自分の目の前にどんな方がおかけになるのか気になる以上に、恐らくお客様の方も、
「どんなスチュワーデスが座るのか?」
を気にしていらっしゃることが多いのではないだろうか。人によってはそれが楽しみで非常口の席をリクエストするのかもしれない。

そんな一方で、
「非常口に座席が取れたのはいいけれど、どうもスチュワーデスさんと向かい合わせだと、どうしたら良いのか分からなくて緊張しちゃって・・・」
そんな話も耳にする。でも、大丈夫。彼女達は接客のプロなのだから、無理に話しかけたりしなくてもいい。その場の雰囲気で対応をしてくれるはず。そして、それができるからこそプロ、という気もするのだけれどいかがだろうか。

最後に、聞いた話を一つ。
男性客室乗務員がいつもの通り離陸時にジャンプ・シートに座ったところ、向かいに座っていたビジネスマンに指を差されていきなり怒鳴られた。
「な、何だぁ、君は!!」

指を差された彼に何の罪もないのだけれど、それだけシート・リクエストをする男性のお客様は、自分の目の前にスチュワーデスが座る事を大前提にしていることがよく分かる。(日系の航空会社で男性の客室乗務員は少数なので、しかたがないといえばしかたがないのだけれど。)

そのかわり、女性のお客様が非常口に座った場合、もしかしたら素敵な男性乗務員が目の前に座るかもしれないので、その辺は公平になっていると考えていただきたい。

 

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