◆聞き間違い

 リカー・サービスのとき、よく聞き間違える単語がある。

 外国人で髭を生やした、かっぷくのよいお客様がいらした。

「Would you like something to drink, sir?(お飲み物はいかがですか?)」
「Well, "milk" please.(では、ミルクをお願いします)

グラスについで差し上げると、
「No No, I said "beer" !(違う違う、ビールだよ)
とおっしゃる。

 そんな、ばかな。
「ビール(beer)とミルク(milk)、全然ちがうじゃない」
と、お思いでしょう?  

 しかし、こんな経験は不思議なことに私だけではない。
実は、仕事に慣れれば慣れるほど、この聞き間違いはおこる。
そして、お客様の外見から、
「この方がミルクをリクエストされるはずがない」
と、へんに気をまわしてビールを差し上げると、そういうときに限ってミルクだったりするのだ。

 機内はいつも「ゴーッ」という音がしている。
そんな音に慣れっこになってしまうと、知らないうちに聴覚が鈍くなるのかもしれない。

 空港のカウンター(ロビー)なども同じである。
絶えず人のざわめきがあの空間を埋め尽くしている。

 そういえば、私が出発ロビーのカウンターにたっていたとき、ビジネスマンの方が、
「ガムテープくれる?」
とおっしゃるので、「何か荷物にでもお使いになるのかな」と、ためらいもなく差し出すと、
「違うって、タ・イ・ム・テー・ブ・ル」
なんともトンチンカンなやりとりである。

 聞き違いのほかに、言い間違いもある。

 これはよく聞く話なのだが、
「おしぼりでございます・・・」
といいながらおしぼりサービスをしている乗務員が、だんだん舌がもつれてきて最後の列のお客様には、
「おしぼりで・・ござる」
と言ってしまった、というのである。

 しかし、そのお客様はその乗務員を笑うどころか、
「これはこれはかたじけない」
といっておしぼりを受け取ったのだそうだ。

 おそらく、この方はサービスを受け慣れていらっしゃる方なのだろう。

なぜなら、「サービス」の鉄則の一つは「相手に恥をかかせないこと」なのだから。

 

 

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