◆ 機内トイレ事情

飛行機にあるトイレを私たちは英語で「LAVATORY」ということから、通称「ラバ」(略語でLAV.)と呼んでいる。例えば、
「ちょっとラバ行ってきます」
と言えばトイレへ行くことを言い、
「ラバチェックしてください」
はトイレのチェック(トイレ内のお掃除しながら不審物がないかどうかチェックをする)を指すことになる。

さて、このトイレ、実は2種類ある。「水洗式」と「バキューム式」。いわゆる「型の新しい飛行機」に採用されているのが「バキューム式」。
(ボーイング社のものに限ってかもしれない。乗務していたもののほとんどがその会社のものだったので、私の知るかぎりではそういうことにしておく。)

レバーを押すと少量の水と共に、
「グォ〜〜〜〜ッ!」
という音をたてて、汚物が流れる、というよりは吸い込む。

私が初めてこの方式のラバのある飛行機に乗ったのは、「B-767」(ボーイング767型)。さすがの私たちも、その音には驚いたけれど、その音の凄まじさを如実に表した小学生の言葉がある。
「お尻が吸い込まれるかと思った!!」
彼女はラバから出てきた途端、目を真ん丸くしてそう叫んだのだ。まさか本当に吸い込まれることはないのだけれど、それくらいの勢いなので、途中でレバーを押してしまったら、そんな気持になるかもしれない。とにかくそれくらいすごい音がする。

一方、「水洗式」はまだ馴染みのある方だと思う。日本に旅客機が就航し始めてからどのくらいの時期にこの方式になったのかは知らないけれど、いろいろな逸話がある。中でも、これはちょっと有名な話なので、ご存知の方も多いかもしれない。

ご存知の通り、インドには「カースト制度」というものがある。
(廃止の方向に向かってはいるようだけれど、まだ風習として根強く残っている)。
生まれながらにその人の身分が決まっているので、その身分によって必然的に職業も限定されてしまう。つまり、
「乗務員になれる人」
は限定される。その上、自分より上の身分の人からサービスを受ける事は考えられないので、ここで問題が起こってくる。それは、
「飛行機に乗る必要があっても、インド人の乗務員からサービスを受られない」
という人達がでてきてしまうこと。
(平たく言えば、イ○○航空に搭乗できない人達ということになる)。

となると、彼らは外資系の航空会社を使わざるをえない。つまり、私たちがサービスするお客様の中にはそう言った理由でお乗りいただくこともあるわけで、その方達は旅慣れていない場合が多く、こちらとしても驚かされることが多い。

さて、一昔前の逸話になるが、そういった旅慣れない方達のラバの使用法は時に想像を絶する、という一例である。

あるとき、食事のサービスが終わってしばらくすると、何となくキャビンの様子がおかしい。今まで白っぽいターバンを巻いていたはずの人がいつのまにやらそれが青く染まっている。しかも、そのお客様のお顔は心なしかすっきりしていて、シャワーでも浴びたような様子。注意してみると、何故か同じような色のターバンを巻いた人は一人ではない。しかも、何やら覚えのある匂い・・・、とそのクルーがラバへ行ってみるとさあ大変。床は水浸し。手を洗うシンクの水はあふれんばかり!

そう、彼らはラバで身を清めていたのだ。そればかりか、トイレの水でターバンを洗っていたらしい。どおりでターバンの色がみんな同じわけだ。インドでのトイレ事情はわからないけれど、この場合、「水」のとらえ方に違いがあったようだ。

そんな話がある一方で、「あたりまえ」と思っている事が飛行機に乗ると、そうでないことがある。そのよい例がトイレかもしれない。

私が仕事をしていたときによく女性から聞かれたのは、
「女性用のお手洗いはどこですか?」
次にお年寄りから聞かれたのが、
「和式のお手洗いはどこですか?」
だった。

今日ではトイレは男女分かれているのが当たり前だし、女性なら洋式・和式があって当然の日本である。しかし、原則的(*1)には、
「申し訳ございません、お手洗いは洋式のみで、男性女性の区別はしておりません」
と答えるしかない。しかし中には、それならば、と洋式を和式のごとく使用する方もいらっしゃるようだ(その様子はご想像にお任せする)。

いずれにしても、みんなが使うトイレ。自分が入ったときにいやな思いをしないためにも、最低のマナーは守って使用したいものである。いくらクルーが掃除をしているといっても、やはり、人間同士の最低の心遣いなのだから。

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*1:ある航空会社ではサービスの一部として女性専用のお手洗いを設けている所もあるようだ。

 

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