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◆ 新人は大変だ(国内編)〜 転機 国内線を乗務し始めて三ヶ月余り、相変わらず後輩は入ってこない状況は続いた。つまり、ジュニア・ディューティー(junior duty)をするのは毎回自分と思ってまず間違いない。とはいえ、多少その日のメンバーの雰囲気で緊張したりしながら、でもなんとか先輩に迷惑をかけない程度には雑用ができるようになっていた。考えてみれば同じことを何度も繰り返していれば自然と身についてしまうのは当たり前のこと。ギャレリーナぶりも多少は様になってきたのかもしれない、などと思い始めていた。 あるとき、国際線の男性チーフがヘッドをとるフライトに乗務することになった。チーフ以外はすべて国内線所属で、一泊二日の「3leg-2leg(一日目が3回乗務、二日目が2回乗務〕」のパターンだった。 いつものように私は前方ギャレーをアサインされた。 「君はチェックアウト(独り立ち:訓練バッヂを外して乗務すること)してどれくらいになる?」 なぜそのチーフが私にキャビン・ディューティーをするように言ったのか、私は全くピンと来こなかった。たまにはキャビンにでも出てみたら、などという心遣いか。キャビンに出られるのは嬉しさ半分、不安半分。ギャレーではおしぼりの数や、作らなければならないお茶の数を把握していればどうにか仕事はできていた。しかし、キャビンとなると自分の担当するお客様についてどのような気を回してサービスしたらいいのか、皆目検討すらつかない。こんなことを言うとおかしく思われるかもしれないけれど、無意識のうちに先輩の顔色をうかがうことが先決になってしまい、本来の「接客」についてはかなり臆病になっていた。とにかく、それだけギャレーでの仕事に張り付いていたのだった。 「どうしたらいいんですか?」 そしてサービスが始まった。客況は八割程度。エプロンに着替え、おしぼりのサービスをする。幸い自分で手に負えないような無理難題をお客様から頼まれることはなかった。ホッとしながらギャレーに戻ると、すでに次のサービスの準備が整っている。カートの上には熱い飲み物の入ったポット、カートの中にはリフレッシュメントが、各担当のお客様分だけきちんと振り分けて入っている。しかもサービスをし始めてから、 カップなどの回収が終わり、エプロンを脱ぐころにはギャレーの中はきれいに片づいていた。お湯の入っているコンテナーの使い方も無駄がない。気が付いてみると、先輩はさっさと着替えて雑誌を持ってキャビンに出ていた。 今までギャレーをしながら、何となくもやもやとしていた霧のようなものが晴れてくるのがわかった。そして、 カーテンがさっと開いたかと思うとチーフが入ってきた。 言われるままにトレイを手にキャビンに出てみる。すべてチーフのアドバイス通りだった。トレイを持って歩いていると、お客様から空になったカップを渡される。他のリクエストも受ける余裕ができる。 二日目の仕事はギャレー・ディユーティーだった。しかし、今までの自分とはどこかしら違っていた。考え方一つでこんなに気持が楽になるとは。仕事を終えてようやくチーフの意図がわかった。 「いろいろありがとうございました。」 やはりそれ以降、そのチーフと一緒に仕事をするどころか、お会いする機会もなかったけれど、今にして思えば私の仕事をしていく上での基本的な「心構え」のようなものは、このチーフとの出会いによることが大きい。 こうしてクルーとしてやっていく自信がこの日を境につき始めたころ、先輩達と接するのも苦ではなくなり、自然と仕事にも張り合いが出てきた。 そしてそんなささやかな余裕が出始めた頃、待望の後輩がやってきたのである。
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