|
◆ 夏になると 〜 怖い話
夏になると、「怖い話」や「ホラー映画」などが紙面で目に付き始める。
怖い思いをして暑さを忘れる、ということなのだろうけれど、この手の話が苦手な私はこうした「涼のとりかた」は好きではない。どうせなら、冷たく冷えた西瓜を食べていたほうがいい。
とはいうものの、ご多分に漏れずCrewの世界でも、「怖い話」はポピュラーな話題(?)の一つである。(話題のトップはやはり「芸能ネタ」だろうけれど)
しかし、この場合は、「暑さから逃れたい」という意味で話題にするのではないので、それはそれで妙に現実味があったりして怖い。そして何故かその舞台がホテル、ということが多いから不思議だ。
今回は、そのいくつかをご紹介したいと思う。
その1
浴室からでてきたCrew。何となく視線を感じてそのホテルの部屋の窓を見る。すると、外から金髪の美青年が覗いている。
「あら、素敵・・・」
と思わずその窓に駆け寄ると、その姿は消えてしまう。と同時にそれを見たCrewは自分の部屋が地上19階にあることを思い出し、ぞっとする・・・。
その2
なかなか寝付けないCrewが、どうにかうとうとし始めたとき、
「ひたひた・・・」
という足音が部屋のの外の廊下から聞こえてきた。あまり聞きなれないその音に怖くなって布団を頭からかぶリ、その布団をしっかりと握る。けれども、
「ひたひた・・・」
素足で歩くようなその足音は、止まることなく確実に近づいてくる。
そして、明らかに自分の部屋の前で止まるのがわかった。ますます不気味に思った彼女は布団の中で、身体を硬くする。
「ひたひた・・・・ひた」
ドアの開く音がしないのに足音だけがベッドに近づき、止まった。
「!?」
異様な雰囲気を彼女が感じ取った瞬間、ものすごい力で布団がはぎ取られた。
「ちがう・・・!」
足音の主が、声にならないような声でそう言うと、すっとその気配がなくなった。
後日、そのホテル界隈で第二次世界大戦後に、大勢の子供たちの死体が放置してあったらしいことを彼女は聞かされる。そして、我が子と生き別れた母親が、その死体置き場にある布をかけられた死体を一体、一体見て回ったとか。
その話を聞いて彼女は思う。
「もしかするとその布団をはぎ取った足音の主は、未だに我が子と会えずにいる母親の霊だったのかもしれない・・・。」
こうした話をさんざん聞かされた後、ジュニアだった頃の私は先輩によくからかわれたものだった。
「そう言えば、角部屋が結構危ないらしいですねえ・・・」
この場合の「危ない」はお化けだか幽霊だかが出る、という意味。
「私も聞きました。でも、その部屋にアサインされるのはジュニアらしいから、私たちは大丈夫でしょう?」
二人の先輩が話している。
「ちょっと待ってください、そういうの私駄目なんですよ;;」
と、私はそれ以上話が発展しないように話を遮るしかない。
そういうときに限ってホテルにチェックインするのは夜。
しかも、部屋に向かう途中で私の部屋番号を聞くなり、
「そう言えばこの階の端の部屋で出たらしいわよ?気をつけてね」
と先輩達は面白がっていう。そして辿り着くのはその話題に上っていた角部屋。
「勘弁してくださいよ;;」
ドアの前で呆然と立ち尽くす私。
しぶしぶドアを開け、私はいつもの行動に出る。
(部屋には入るなりテレビをつけ、その音量をいつもより大きくし・・・。この後は「眠れぬ夜」をご覧下さい。だいたい同じようなことをして寝不足になっていました。)
Crewの中には、私のような怖がりな人間ばかりではなく、中には霊感が強い人もいる。一度だけ仕事を一緒にした先輩は、まさに霊が見えてしまうくらいの霊感の持ち主だった。国際線の滞在先でのこと。
「シャワー浴びているでしょう?そうすると、誰かがじっと私のことを見ているのよ。そのホテルにはだいたいいるのよね。またか、って感じで」
「でも、それって日本人じゃないわけですよね?」
と思わず私。
「そうそう、この間はアジア人だったかな。声を出して話しかけてくるわけではないのよ。こう、とにかく自分の存在を知らせたいらしくて、英語なんかで話しかけてくる」
「でも、声はださないんですよね?どういうことですか?」
「なんていうのかな、恐らくこういうのをテレパシーっていうのかなと思うんだけれど、うまく説明できないわ。でも、そこでその人に気づいた、と悟られてはいけないの。後々面倒になるから」
「はあ・・・」
この「面倒になる」とは、どうも彼女にその霊が憑いてしまう、ということらしい。
かつてこの先輩のように霊感の強い人と話したことがなかったので、びっくりするやら、興味津々やらで私は少し興奮気味。
「それでどうするんですか??」
「私は日本人で日本語しかわからないの!という気持を強く持って、他のことを日本語で考えるようにするの。しばらくするとだいたい諦めて、いなくなるんだけど」
「でも、見えるのっていやですね・・・」
「今見えないんでしょう?なら大丈夫よ。二十歳になるまでに(霊が)見えなければずっと見えないから。」
最後にそう元気づけられて(?)ひとまず塩を持つことを薦められた。彼女はとりあえず、仕事の時は塩を携帯しているそうだ。
お葬式から帰ってくると、玄関で塩を身体に降りかけて清めるのだから、持っているだけで同じ効果があるのかもしれない。本来なら天然の塩がよいのだろうけれど、気分的に「持っている」ということのほうが大切なので、機内食のトレーに付いている、パックに入ったものをとりあえず持っていることにした。
おかげで、
「そう言えばこの階の部屋で出たらしいわよ?気をつけてね」
という先輩の言葉にも、
「お塩持ってますから大丈夫です!」
と応えられるようになっていた。
でも相変わらず、私の怖がりは急に治るわけではなく、テレビをつけて・・・などの「気を紛らわせる処置」は続いていたけれど。
ところで、霊感の強い先輩が塩を携帯しているのにも関わらず、浴室に「出てくる」ことに疑問を感じた方がいらっしゃるのではないだろうか。実は私もその一人。
「どういうわけかわからないけれど、彼らはとても咽が乾くみたい。だから水を求めて浴室にいるのかもね。それに、まさかホテルの浴室に塩を盛るわけにもいかないでしょう?『携帯する』のにも限度があるわよ」
とのこと。確かに、枕元に置いておいた水が、飲んでもいないのになくなっていた、という話も聞いたことがある。それってそういうことなのかもしれない。
では、最後にもう一つこんなお話も。
その3
『飛行機が離陸滑走中、窓側の席に座っていたお客様。
しばし、ノスタルジックな気分に浸りながら、窓の外を見る。
すると、若い女性がにこやかに手を振リながら、その飛行機を追いかけてくるのが見えた。
「!?」
飛行機が離陸滑走するときのスピードに憑いてくるなんて。しかも、滑走路に普通の人が入ってこられるわけがない。お客様がその姿に気づくや否や、あっという間に彼女はその窓へやって来た。そして、名残惜しそうに手を振りながら、
「またいらして下さいね・・・」
その時、飛行機はすでに離陸していた・・・・。』
さて、私はお塩を枕元において寝ることにします。
おやすみなさい。
|