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◆スチュワーデスへの道 〜 入社までの間(その4)
さて、この職場にも別れを告げる時が来た。
たった2ヶ月あまりのアルバイトだったが、この羽田空港で働くことが出来たのは私にとって大きな自信につながった。そして、これから社会に出る私にとっては、「社会人になるための気構え」をするためのいい機会だったといえる。つまり、社会人と学生の間にあるギャップを、この機会に少しずつ埋めることができたことで、「社会」という責任を伴った世界へ踏み出すための準備をすることができた。
私以外のアルバイトの友達は、入社後もまたこの職場で地上研修をするので、入社するまでちょっとした「お休み」に入るといった感じだった。
しかし、私の地上研修先は北海道千歳空港。再びこの羽田空港で働くことはもうない。
私は、ひとり卒業していくような、そんな気持の中で仕事をこなしていた。
最後の仕事が終わってから、ささやかな送迎会がオフィスで行われた。
私達アルバイトの他に、短期グランドホステスの契約が切れる人もこの日が最終日だったので、職場の人がセッティングしてくれたのである。
「北海道はいいよ。美味しいもの食べられるし、テニスもできるしさ・・・」
「同期が行ってるけど、楽しいらしいよ」
「赴任するときはまたみんなで見送るからね」
短い間だったけれども、これからも同じ会社で働く仲間として受け入れられたのが嬉しかった。
送別会が終わってから、私を呼ぶ人がいた。
彼は会社の中で言えば中堅にあたる先輩で、仕事中は厳しいこともあってちょっと近寄り難い感じのする人だった。しかし、仕事が終わると、私たち若手を遊びに連れて行ってくれたり、いろいろな相談にも乗ってくれる兄貴のような存在となっていた。
彼には乗務経験もあったので、そんな話も折に触れてきかせてもらった。
自分たちもいずれは乗務することになるわけだが、まだ未知の職場である機内での事や海外の話はとても興味深いものだった。
「長いフライトを終えると、今まで自分が乗っていた飛行機を思わず『ごくろうさん』って言いたくなるんだよね」
仕事には厳しいがハートのある人だった。
「いろいろお世話になりました・・・・」
その先輩にお礼を言うと、
「これは乗務していたときに撮ったものなんだ。これからも頑張れよ。」
そう言ってパネルを手渡された。アラスカの流氷の写真だった。
私もこの写真にある風景をいつか見ることができるのだろうか。
「まあ職場は変わるけれど、同じ飛行機を飛ばしているわけだし。身体には気をつけて、たまには顔を出せよな。」
その写真がいつ撮られたのかを見るためにパネルの裏側を見た。
「Have a nice flight in your life!」
私は熱いものが込み上げてくるのをなんとか押さえながら、お礼を言うのが精いっぱいだった。
「記念撮影をしよう!」
私たちは人がいなくなって明かりも落とされたカウンターロビーへ出た。
仕事をしている時間帯なら大勢の人でごった返しているこのロビーも、この時間では死んだように静まり返っていて、私たちの話す声だけが響き渡っている。改めて見回すとその空間はとても広く感じられた。
「撮るよ!」
フラッシュが光り、その一瞬をカメラが切り取る。
今度ここに来るときは私が千歳空港へ行くときだ。
「お疲れさまでした!」
そこにいた若手のメンバー、一人ひとりと握手をした。
こうして私の羽田でのアルバイトは終わった。
これから数ヶ月後、正式に社会人としてこの会社に加わり、「飛行機を運行する」という仕事をしていく者の一員となることは誇らしくもあった。
そして、これから始まる私の人生のフライトプランは未定だが、きっと素敵なものになる、と言う確信がこのとき芽生えていた。
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