◆ スチュワーデスへの道 〜会社見学

そして、会社見学当日。
羽田にあるその会社へ向かった。

私自身、記憶がいいほうなのだが、どういうわけかこの日の行動を明確に思い出すことができない。よほど緊張していたのだろうか。

集まったメンバーはさきごろ顔を合わせた「スチュワーデス志願者」たち。
この日は私の在籍する学校の人間だけの会社見学である。
唯一それだけが緊張を多少はほぐしてくる材料だった。
受付を済ませ、エレベーターで指定された部屋へ行く。
会議室のようなところだったような気がする。

集合時間が来た。結局集まったのは全部で何人くらいだっただろうか。
学校で行われた会社説明会に来ていた学生がそのままその部屋にいるようだった。
そんな中で、やはり水玉のスーツを着た彼女は妙に印象的だ。
「印象づける」という意味では一歩リード、ということなのかもしれなかった。

ドアが開いて、女性の社員が現れる。
「このシールに名前を書いて見えるところにはってくださいね。今日一日これが皆さんの許可証の代わりになりますから。」
社員は必ず身分証明書をつけているが、部外者はそれに代わるものが必要らしい。
いわれた通り黒マジックで自分の名前を書いて左胸にはる。
いよいよ見学の始まりだ。

まず、会社の中にある訓練用の機内座席などをみせてもらった。
ちょうど飛行機の片方の窓側の壁ををはずしたような感じになっている。
「ここで実際に機内サービスの練習をしています。モックアップとよんでいますが。」
はあ、なるほど・・・。
緊張はしているものの、完全におのぼりさん状態になってしまう。
しかし、感心ばかりしていられない。
「会社見学」とはいえ、事実上の試験と同じなのだ。
なにしろ洋服には自分の名前が書いてあるシールをはっているので、チェックしようと思えば簡単にできてしまう。変に緊張していることで、どこを案内されても、そこにいる社員の人たちがみんな試験官にみえてくる。普段よりもひとまわり小さくなって歩いているような気がした。

一通り見学が終わったあと、
「それではこちらにどうぞ」
といわれて4人ずつ部屋に通される。
面接が始まるらしい。

「いかがでしたか、見学してみて・・・」
などとにこやかに話しかけるのは、先日学校で会社説明をしてくださった方だった。
「それでは、これから簡単に自己紹介をしていただきましょう。約3分でお願いします。時間になったら合図をしますので、その時点でお話はやめていただきます。大学はみなさん同じですから、お名前からお願いします。それではそちらの方から。」
「はい、○○○○と申します。私は・・・」
ついに始まった。
順番を待っている間にもその様子をチェックされているかもしれなかった。
人の話をちゃんときいています、ということを強調するために頷く。
一人が話している間、残りの三人はただただ頷いている。しかもにこやかに。
「はい、ありがとうございました。では、次の方・・・」
私はこの次である。頷きながらだんだん開き直っていく自分がわかる。
まあ、本番ではないわけだし、これでだめならまた考えよう。
「はい、では次の方・・・」
とにかく大きな声でハッキリと話そう。もうそれだけだった。

言葉を正確に思い出すことはできないが、自分がオーケストラ部に所属していてヴィオラを弾いていること、そしてその楽器の説明と演奏の中での役割などを簡単に説明した。そして、おそらくスチュワーデスという職業も機内サービスという曲の中では、実は表だった役割ではなく、ヴィオラのような縁の下の力持ち的存在ではないか、というようなことを話し、さりげなく自分がその職業に向いているのではないかということもそえた。
時間は練習通り3分にきっちりおさまった。

こうして面接が終わり、試験官が席を立った。
「お疲れさまでした。今日の結果は学校の就職部の方におしらせしますので。」

ようやく「シール」をはがし、会社をでる。
数十メートル歩いて、ようやくみんな口を開いた。
「終わったね・・・・」
後は数日後に結果が知らされるのを待つだけだ。
もし、これで駄目でも一般の「会社訪問」には出席することができる。
ただ倍率はおよそ3倍以上になるだろうといわれていた。
何千人の志願者が殺到するわけだから、今日がだめならおそらく見込みはないと思っていいだろう。

早く結果がわかるだけ他の人よりも恵まれている、そう思わなくては。

 

スチュワーデスへの道 〜 試験勉強

 

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